まえがき

 

 本報告は、広島大学平和科学研究センターが1999年から2000年度にかけて行った研究プロジェクト「ポスト冷戦時代の核問題と日本」の成果の一部である。

 この研究プロジェクトは、冷戦終焉から1990年代の半ばまでの核軍縮に対する大きな期待感が、インドとパキスタンの核実験によって打ち破られときに当たって、日本の立場から核問題と核廃絶の問題を再検討することを意図したものであった。

 

 研究プロジェクトにおいては、後掲のように国内外の多くの専門家を招聘してシンポジウムと研究会を開催し、これを中心に遂行した。また、成果の社会的還元の一端として、1999年10月2日から11月6日にわたって広島市民を対象に、広島大学公開講座「核軍縮と日本の役割」を開講した。

 

 本報告書は、このような研究活動にもとづき、2000年1月19日に開催された平和科学研究センター第133回研究会における報告にセンターの専任研究員の論考を加えてまとめたものである。報告の掲載を快諾いただいたフランク・ウムバッハ、クリストファー・ヒューズ両氏に心より感謝申し上げる。

 

 研究プロジェクトの成果を平和科学研究センターの研究報告シリーズNO.27として上梓するに際し、この報告書を可能にしていただいた研究会とシンポジウムの報告者と参加者にこの場を借りて改めて御礼申し上げる。また、広島大学後援会からは、第133回研究会の開催のための助成を賜った。改めて感謝の意を表したい。

 

平成13年2月

広島大学平和科学研究センター長

松尾 雅嗣

 

「ポスト冷戦時代の核問題と日本」プロジェクト

シンポジウム・研究会一覧

 

第24回シンポジウム 1999.12.17

21世紀の日本の核政策―変動する国際社会の中で−

 基調講演

  松永信雄(外務省顧問・東京フォーラム共同議長)

 パネリスト

  梅林宏道(平和資料協同組合)

  木村修三(姫路獨協大学)

  黒沢満(大阪大学)

 

第25回シンポジウム 2000.11.25

地方から見た日本の核問題

 報告

  我部政明(琉球大学)「沖縄について」

  川村一之(非核自治体草の根ネットワーク世話人)「非核自治体について」

  山根和代(高知大学非常勤講師)「平和博物館について」

  大牟田稔(元広島平和文化センター理事長)「広島について」

 

研究会

125 回 1999.4.28

 中園和仁: 返還後の香港:一国二制度の行方

126 回 1999.7.26

村田晃嗣(評者)・山田浩(討論者): 山田浩『IPSHU研究報告シリーズ研究報告No.26:冷戦後世界の核状況とヒロシマ―「新核廃絶主義者」の見解を手掛かりにして―』合評会

127 回 1999.11.24

 Akmal Hussain Nuclear Issues in South Asia: A Bangladeshi Perspective

128 回 2000.2.3

 梅本哲也:CTBT批准審議と米国の核政策

129 回 2000.3.1

 菅英輝:クリントン政権のアジア戦略

130 回 2000.3.27

 澤田眞治:地域統合・信頼醸成・核不拡散:南アメリカの事例

131 回 2000.7.3

百瀬 宏:戦後フィンランドの戦争責任問題―戦争責任裁判(1945-46年)をめぐって―

132 回 2000.9.13

 村田晃嗣:日米同盟の歴史と課題

133 回 2001.1.18

 Security in East Asia and Nuclear Issues surrounding Japan

 

Frank Umbach: Strategic Trends of Global Denuclearization and Nuclearization ? Implications for Japan’s Security policies, Regional Stability and the TMD-Debate in East Asia

 

Christopher Hughes: Ballistic Missile Defence and Sino-Japanese Relations:The Impact on Arms Control in East Asia

 

 Discussant: Koiji Murata

 

 

目次

 

まえがき

 

執筆者一覧

 

核廃絶におけるアキレスと亀 ―あるいは過程ユートピアの陥穽―

松尾雅嗣

南太平洋地域の核問題と日本

小柏 葉子

 

日中関係と弾道ミサイル防衛(BMD)システム

クリストファー・ヒューズ

 

Strategic Trends of Global Denuclearization and Nuclearization: Implications for Japan’s Security Policies, Regional Stability and the TMD-Debate in East Asia

Frank Umbach

 

核兵器使用と国際人道法―1996年核兵器使用と使用の威嚇に関する国際司法裁判所勧告的意見を中心にして―

篠田英朗

 

 

執筆者一覧

 

松尾雅嗣:広島大学平和科学研究センター

 

小柏葉子:広島大学平和科学研究センター

 

クリストファー・ヒューズ (Christopher Hughes)

Centre for the Study of Globalisation and Regionalisation, University of Warwick

 

フランク・ウムバッハ (Frank Umbach)

Deutsche Gesellschaft f?r Auswärtige Politik (DGAP)

 

篠田英朗:広島大学平和科学研究センター